RECIPEつくるたのしみ
毎日の食卓に薬膳を

「薬膳」とは、中国の伝統医学である「中医学」に基づいた食事をいいます。さまざまな考えに基づきますが、もっとも大切なのは“何を食べるか”。季節や体調に合わせて食材を選びます。
また、古くから病気の治療食はもちろん、病気にならないために食事を通してセルフケアするという役割もありました。つまり、食材がもつ効能により、暑いときは冷まし、冷えているときは温め、足りないときは補い、過剰なら排出する。心身のバランスを、日々の食事でとってゆきます。
だから、難しく捉えなくて大丈夫。日本の家庭でも、身近な食材ですぐに取り入れられます。ここでは、その基本から、私たちの生活に取り入れやすいものをご紹介します。
Tips1 -食材の性質「五性(ごせい)」で選ぶ
薬膳では、食材の性質を生かして献立をつくります。それが、からだを冷やしたり温めたりする「五性」。今の自分が暑いのか、寒いのかをまずは観察し、そのときにフィットした食材選びでフラットな心身を目指しましょう。
寒(かん)・・・からだを冷やし、鎮静・消炎作用がある。
トマト、バナナ、キュウリ、ゴーヤ、スイカなど。夏や暑い地域で育つもの。
涼(りょう)・・・過度に活性化したからだを鎮める。「寒性」より控えめだが、からだを冷やす性質がある。
ナス、キュウリ、セロリ、レタス、水菜、みかん、蕎麦、豆腐など。
平(へい)・・・からだを温めたり冷やしたりする性質がなく、どんな体質でも食べやすい。
白米、レンコン、ニンジン、キャベツ、卵、豚肉、タラなど。
温(おん)・・・からだを穏やかに活性化する。「熱性」より弱くからだを温める性質がある。
赤ワイン、カボチャ、玉ネギ、鶏肉、鮭など。
熱(ねつ)・・・内臓を活発に働かせ、エネルギー代謝を向上させる。
唐辛子、コショウ、生姜、シナモン、ラム肉など。
Tips2 -体調を理解する「五味(ごみ)」
基本的には、5つの味をバランスよく食べることを大切に。一方で「五味」は、そのときの体調により、その味がほしくなったり、強く感じたりするため、体調を掴む手がかりにもなります。
たとえば、腎が弱っているときは「鹹(かん)」、肝が弱っているときは「酸」、心(しん)が弱っているときは「苦」、脾が弱っているときは「甘」といったふうに。「五臓」※ と繋がり、欲する味によって、からだのどこが疲れているのかがわかります。
酸味・・・下痢や汗、咳を止める。イライラを抑える。
消化を助ける働きがある。
苦味・・・解熱作用。湿を除く。
暑い時季や湿気、むくみなどが気になるときに。過食すると、肌が乾燥したり、冷えやすくなる。
甘味・・・滋養強壮。解毒作用。
消化吸収、脾胃の働きを促し、不要物を排出する。砂糖の「甘味」ではなく、米類や芋類などを指すことが多い。
辛味・・・発汗作用。
発汗により体表の皮膚が潤い、免疫を高めることにつながる。呼吸を促し、全身の水分調整を行う。
鹹味/塩味(かんみ/えんみ)・・・塊を柔らかくする。便秘や腫れもの改善。
水分の代謝と貯蔵を促進する。
※「五臓(ごぞう)」とは
人もまた自然界の一部と捉え、人体の働きを5つに分けたものが「五臓」です。五臓がお互いに協力し、バランスを調えることで、心身ともに健康を維持しているとされます。
肝(かん)・・・気の巡りを促し、血を蓄える。感情や自律神経と関係し、ストレスの影響を受けることも。
心(しん)・・・血のめぐり、精神や思考をコントロールする。
脾(ひ)・・・消化吸収を通してエネルギーを補充し、「気血津液(しんえき)」を生成する。西洋医学でいう消化器官と関係する。
肺(はい)・・・呼吸を司り、水分代謝をコントロールする。
腎(じん)・・・水分の貯蔵、成長や発育、老化など、生命活動にも関わる。
Tips3 -今日から取り入れられる「薬膳」
食材は、さまざまな効能を持ち合わせていますが、中でも気軽に取り入れられるものをいくつかご紹介します。
■「からだを温める薬味」をプラス
寒さでからだが冷えたときや、冷え性、腹痛になりやすいなどといった場合、おすすめは「からだを温める薬味」。生姜、長ネギ、ニンニク、唐辛子、青ジソなど。お料理に合わせて加えてみましょう。
■「からだを温めるスパイス」に注目
スパイスの中でも、からだを温めるものと冷やすものとがあります。なかでも、スターアニス(八角)とシナモンは、冷え性や、冷えによる胃腸の調子を整えてくれるスパイス。お料理はもちろん、ホットドリンクの風味づけに一振りしても。
■「パワーを補う食材」で底上げ
疲れやすい、だるくてやる気が出ない、食後の眠気が強いなど。からだがパワー不足の場合は、鶏肉、長芋、しめじ、白米などを取り入れてみては。
■お弁当の常連「卵焼き」で食養生
「卵」は、体液を補い、からだを潤し、アンチエイジングにつながる食材と考えられています。血を補うので、貧血や眼精疲労にもおすすめです。
■疲れた胃腸に「大根のピクルス」
「大根」は、消化を助けてくれる食材です。胃もたれ、胸焼け、食欲不振、食後の眠気が強いなどといった場合に取り入れてみるとよいでしょう。そこへ、消化を助ける「酸味」を加えてピクルスにすれば、よい箸休めに。