SEASONAL旬をたのしむ
地中海料理に欠かせないスパイス

「美食の宝庫」と呼ばれて
ヨーロッパ、アジア、アフリカ大陸をまたがる地中海沿岸地域。古くからこの沿岸諸国は、まばゆい太陽と肥沃な土壌に恵まれ、それぞれ海を介して隣国と食の交流を図りながら、多様な食文化を築き上げてきました。
素材を活かし、ハーブやスパイスを効かせた調理法で、愛情たっぷりにつくられる郷土料理や家庭料理。それを、家族や仲間の笑顔とともに食すよろこび。この地域の人々が携える共通の“豊かさ”は、世界中の人々の食文化にも影響をもたらしています。

夏は乾燥、冬は湿潤という“地中海性気候”により、オリーブなどの樹木性作物の栽培が盛んな沿岸諸国。その料理は、オリーブから絞られるオリーブオイルをベースに、旬の野菜や魚介類などの素材をふんだんに、できるだけまるごと使います。
そして、オリーブオイルをはじめ、ワイン・小麦・ブドウ・ニンニク・トマトは、地中海地域における重要な“食の要素”です。とくにトマトは、諸国に共通して、野菜として味わうだけでなく、基礎調味料としても利用されてきました。日本では一般的な、味噌や醤油といった発酵調味料がないため、トマトの酸味や風味は料理の味をよくするありがたいものだったのです。
地中海料理とハーブ&スパイス
また、これらに合わせて欠かせないものが“ハーブ&スパイス”(以下、スパイス※1)です。日本では「香辛料」「薬味」などとも言いますが、スパイスは食材のくさみを消し、料理には香り・辛味・色などを加えます。同時に体へは、食欲増進・消化吸収の補助・発汗・健胃整腸などを促してくれます。
それに何より、スパイスはトマトとの相性も抜群! 国はそれぞれに違っても、両者の相乗効果により、いわゆる“地中海料理”が飛躍的に発展していきました。
ーーはるか遠い昔、ローマ帝国全盛の紀元1世紀。それは、肉食が盛んな欧州が、インド・セイロン島でとれるこしょう・シナモン・クローブなどを珍重し、同じ重さの黄金と等価で取引していた時代。それから2000年もの時が経ち、現在、世界には350種類以上のスパイスが存在するようになりました。
いまや、沿岸諸国で暮らす人々にとっても、スパイスは希少高価なものではなく常備品。屋外の市場には、膨大な種類のスパイスが並び、活気で満ち溢れています。
そしてまた、スパイスによって育まれた、この伝統的で素朴な“香りのごちそう”こそが、 DEAN & DELUCAの食の原点でもあるのです。
※1ハーブ……スパイスの中でも、主に葉や茎の部分を指し、多くは乾燥させずに生の状態で使う。ハーブ以外のものだけを「スパイス」と呼ぶこともあるが、その使い分けはそれほど明確ではないのが実情。
地中海料理の基本のスパイス

1.タイム 2.バジル 3.オレガノ 4.カイエンペッパー 5.ブラックペッパー 6.ホワイトペッパー 7.ターメリック 8.サフラン 9.パプリカパウダー
1~3は、主に葉(=ハーブ)の部分。料理に加えることで、肉や魚の臭みを消したり、風味を加えたりする目的がある。
4~6は、主に料理に辛味を加える。また5と6は、元の実は同じ。けれどその風味はかなり異なり、5のほうが香りも辛みもピリッとしてシャープなのに対して、6はおだやかでやさしいテイスト。使い分けを覚えると便利。
7~9は、料理の色づけなどに利用することも多い。
各国の郷土料理と代表的なスパイス料理
フランス
プロヴァンス(ニース / マルセイユ)
ハーブの宝庫である南仏の料理は、ハーブにニンニク、オリーブオイルをたっぷりと使うのが特徴です。オリーブとアンチョビでつくるペースト「タプナード」や、野菜の煮込み「ラタトゥイユ」などが有名。

南仏の漁師料理 「ブイヤベース」
脂ののった白身魚を数種類。さらに、ムール貝やハマグリ、オマール海老などに、ハーブ類(フェンネル、ローズマリー、ディル)と、決め手のサフラン(8)をたっぷり加えて煮込みます。仕上がると、海鮮風味の濃厚なスープに。
イタリア
シチリア / サルディーニャ島 / カンパニア(ナポリ)
南部ではトマトの生産量が多く、ドライトマトが名産品です。料理は、新鮮な魚貝や野菜をたっぷり使ったシンプルな調理法が基本。また、シチリアでは、塩漬けや酢漬けのケイパー(白い花の咲く実)、オレガノ(3)、魚のくさみ消しのためにフィノッキという甘い香りハーブがよく使われます。

ピッツァの代名詞 「マルゲリータ」
トマト、モッツァレラチーズ、オリーブオイル、バジリコの葉を乗せて焼いた、シンプルなピッツァ。トマトとチーズの相性がよいオレガノ(3)をたっぷりかけて、辛味を移したペペロンオイルを回しかけていただきましょう。
スペイン
スペイン料理は、一般的には材料にあまり手を加えず、トマト、ニンニク、オリーブ油、サフラン(8)を多く使うのが主流です。バレンシア地方のサフラン栽培は、世界的にも有名。また、広大なイベリア半島では、地理的な条件の違いが大きな地域差を生んでいるため「スペインには、スペイン料理はなく、地方料理だけがある」と言われるほど、多彩な地方料理があります。

スペインタパスの定番「タコのガリシア風」
ぶつ切りにしたタコに、ピリ辛のパプリカパウダー(9)やカイエンペッパー(4)とオリーブオイルをたっぷり振りかけて。
モロッコ / 北アフリカ地域
主にモロッコを中心に、アルジェリア、チュニジアといった北アフリカ一帯で食べられている「クスクス」は、先住民族ベルベル人が伝えてきた、数千年の歴史をもつ食べ物です。フランスではサラダに入れるなど、フランス流にアレンジされています。

北アフリカの伝統料理 「クスクス」
「クスクス」とは、デュラム小麦を粉にし、水分を含ませ、粒状にしてから蒸して乾燥させたもの。いわゆる最も小さな乾燥パスタです。パプリカ(9)、カイエンヌ、ターメリックパウダー(7)などで煮込んだスープとハリッサを添えて。