SEASONAL旬をたのしむ
雑穀のある暮らし

はるか昔から日本人の食生活を支え続けてきた雑穀が、優れた栄養価などから、いま改めて見直されつつあります。
ひとロに雑穀といっても様々。そして、それぞれが異なった栄養成分やおいしさ、食感などをもっています。だからこそ、それぞれの特徴を知り、自分の体調や好みで選び、主食に豊かな広がりをもたせていくことで、食卓はぐんと豊かになります。もちろん、主食以外にも工夫次第で活躍。サラダやスープなどに取り入れれば、よりヘルシーでおいしい食生活をたのしめます。
今回は、栄養バランスとおいしさを両立した、雑穀のあるたのしみをご紹介。日々の食卓に、柔軟に取り入れてみてください。
土鍋でふっくら、十穀米ごはん

手軽に雑穀を味わえる食材である「十穀米」。様々な雑穀をブレンドしたもので、白米に混ぜて炊き上げるだけで、もちもちとした食感に香ばしさがプラス。まるでお赤飯のような風味豊かなごはんになります。
また、様々な雑穀がブレンドされているので、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなど、現代人に不足しがちな栄養素をたっぷりと摂取できるのもいいところ。
おすすめは、土鍋で炊くことです。炊飯器でも十分おいしいですが、じっくり旨みを引き出す土鍋で炊き上ると格別。炊き方は、コツを抑えればそんなに手間ではありません。ご自宅のガスコンロと土鍋のクセを掴み、おいしい十穀米ごはんを味わってみてください。
【土鍋ごはんの基本の炊き方】
浸水させたお米を土鍋に入れ、中火で火をかけておよそ5分。ブクブクと吹き上がってきたら火を弱め、吹きこぼれない程度の火力(弱火~中火)に調節し、ふたたび10分間炊き続けます。この間、蓋は開けないこと。10分経ったら、強火にして10秒(お焦げが好きな方は20秒)数えて、火を止めます。
DEAN & DELUCA がおすすめする「十種の雑穀」

- 1. 黒米
古代米の種類の一つで、日本ではおはぎのルーツといわれている黒米。精力増強、健胃、造血などの面で注目され、日本でも栽培面積が増えています。白米2〜3合に対して大さじ1杯の目安で炊くと、お赤飯のような鮮やかな色になります。
- 2. たかきび
紀元前3000年以前に栽培されていたとされる「たかきび」。食物繊維、ポリフェノール、カリウム、リン、ビタミンB1、B6などの栄養価を含みます。炊き上がりの赤みを帯びた色、弾力のある噛み応え、コクのある味わいから「ミート・ミレット」とも呼ばれ、ハンバーグやコロッケの具としてもたのしめます。
- 3. 炒り大豆
「大豆」には、イソフラボンをはじめ、脂質、炭水化物、食物繊維、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、多種多様な栄養が含まれています。その栄養がたっぷり詰まった「炒り大豆」は、ごはんのほか、スープや味噌汁といった汁物料理から、サラダやマリネなどのトッピングまで、様々なレシピ・料理の材料としておすすめ。
- 4. 押麦
大麦を蒸してローラーで平たく潰して加工した「押麦」は、食物繊維が豊富です。欧州ではリゾットやスープの具などとして親しまれています。食感は、もちもちと柔らかく、麦独特のコクと風味があり、お米と炊く以外にも様々な食材と合わせやすいです。
- 5. アマランサス
粒は小さく、炊くともっちりと魚卵のような食感。味というよりは、米や料理の和え物として食感をプラスする使い方がおいしさを引き出します。また、白米に比べ、カルシウムが約32倍、食物繊維が約14倍、マグネシウムが約12倍、鉄分が約12倍と、栄養が豊富。ふだんの食事に上手に取り入れたい穀物です。
- 6. ひえ
縄文時代に中国から伝来した説や、日本起源説がある「ひえ」は「あわ」と並んで日本古来の穀物といわれています。栄養価も高く、特に食物繊維は白米の8倍以上も含んでいるのだとか。また、ひえに含まれるたんぱく質は、血中の善玉コレステロール値を高める働きも。粘りやクセのない食感が特徴的です。
- 7. 丸麦
精麦した大麦を「丸麦」といいます。「押麦」のように潰していないため、プチプチとした歯ごたえが特徴。煮込みやスープに入れると自然なとろみがつきます。ビタミンEが豊富で、カルシウム、たんぱく質、ミネラル、食物繊維も多く含まれています。
- 8. もちきび
たんぱく質をはじめ、ビタミンB1、B2、カルシウム、鉄分などが多く含まれている「もちきび」。ごはんやお粥に混ぜると、もちっとした食感と粘りが加わります。ポイントは、アクが強いのでアク抜きをすること。よく研ぎ、炊く前に30分ほど水につけてアク抜きをしてから、お米などに混ぜ合わせましょう。
- 9. 炒り黒豆
「黒豆」と「大豆」は、栄養的にあまり大差がありません。特筆すべきは、黒豆特有の黒い色素の成分であるアントシアニン (ポリフェノールの一種)が、血液をサラサラにして抗酸化力を発揮する点。また、ローストした黒豆を微粉末化すると消化吸収が高まり、黒豆がもつ数々の機能性が促進されます。
- 10. もちあわ
日本では縄文時代から栽培されていた「ひえ」と並ぶ、最古の穀物です。食物繊維やミネラル、ビタミンB群が豊富で、独特のえぐみは、整腸作用のある成分で高い栄養価の吸収も助けてくれます。また「もちあわ」は、抗酸化性が高く、美肌も期待。 粘り気のある食感から、お菓子にも多く用いられています。
雑穀をたのしむ世界のレシピ
これらの雑穀を味わえるレシピをご紹介します。炒めて、煮込んで、炊き込んで。気軽に日々の食卓にプラスしてみてくださいね。
チリコンカルネ -豆と肉の煮込みはサラダに応用しても

メキシコ生まれのスパイシーなサラダ「チリコンカルネ」。柔らかく煮込んだ金時豆などに、挽肉、玉ネギ、トマト、チリパウダーなどを加えて煮込み、キュウリや赤玉ネギのみじん切りをあえ、シャリッとした食感をプラス。さっぱりと仕上げます。トルティーヤなどのパン、パスタ、ごはんと一緒に食べてもおいしい。
リボリータ -固くなったパンが生き返るうれしいスープ

具だくさんな野菜スープに、ふっくらとした甘みのあるインゲン豆と、固くなったパンを入れてじっくり煮込むだけ。トスカーナ・フィレンチェの伝統的な家庭料理です。“リ(もう一度)”と“ボリータ(煮込む)”という名前の通り、二度煮することで味に深みが増します。おじやのようなとろっとした食感に、素材のやさしい甘みとコクが広がるマンマの味。仕上げにパルメジャーノ・レッジャーノやオリーブオイルを加えてどうぞ。
スコッチブロス-もっちりとした大麦を味わう

スコットランドの伝統的な具だくさんスープです。これに欠かせないのが大麦。お肉の濃厚なスープに、柔らかく煮込んだ野菜ともっちりとした大麦の食感がアクセント。とろ火でコトコト煮込んだ素朴な一杯は、体が芯から温まりますよ。イタリアの「ミネストローネ」にも似た味わいです。
かぶと玄米の牛スジスープ -玄米を加えて雑炊風に

じっくりと煮込んで柔らかくした牛スジと、スープに溶け出た旨味とゼラチン質のコクを堪能するメニューです。そのおいしさを味わいつくすには、炊いた玄米を加えて、雑炊のようにするのがおすすめ。牛スジと聞くとこってりとしたものをイメージするかもしれませんが、熟成された牛スジを使い、和風出汁とあわせることで、すっきりと仕上がります。