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LIG EVENT REPORT -石井康雄さんに教わるおいしい抽出

コーヒーは、同じ豆でも淹れ方ひとつで味わいがぐっと変わります。だからこそ、自分でおいしい一杯を淹れられたなら、きっと毎日はもっと豊か。
そこで、プロフェッショナルにおいしい抽出を教わるワークショップを『カフェ 虎ノ門ヒルズ』にて開催しました。
講師を務めてくださったのは、東京・本所に焙煎所を構える『LEAVES COFFEE ROASTERS(リーブス コーヒー ロースターズ)』オーナーの石井康雄さんです。石井さんとは、この夏、DEAN & DELUCAのティラミスとのペアリングをイメージしたコーヒー『サマーブレンド 2022』をつくりました。

DEAN & DELUCAと石井さんが取り組んだ『サマーブレンド 2022』
今回のワークショップでは「石井康雄さんにおいしい抽出を教わる」「コーヒーとスイーツのペアリングをたのしむ」という、2つの体験をご用意。『サマーブレンド 2022』を使い、ホット2種と水出しの抽出を石井さんがデモンストレーション。参加者の皆さんには、石井さんの淹れたコーヒーと一緒にDEAN & DELUCAのティラミスもお召し上がりいただきました。
「反同調は感動を生む」
まずは、テーブルに流れる緊張気味の空気をほぐすように、石井さんがコーヒーへの思いやこだわり、ペアリングを考えるうえで大切にしていることを話し始めます。

「リーブス コーヒーでは、甘くてフルーティーな、どこか紅茶のような焙煎をしています。今回の『サマーブレンド 2022』は、単体で飲んでも、スイーツと一緒でもおいしく、ホットもアイスも両方たのしめますよ。
僕が感動するのは“反同調のペアリング”です。今回でいえば、シトラスや甘くないベリーを思わせる酸味や甘味をもつこのブレンドを、クリームのデザートであるティラミスにうまく合わせてみました」
「コーヒーは数値化が大事」
空気が少しほぐれたところで、まずはホットコーヒーから。
「1杯分のハンドドリップと、3~4杯が一気に淹れられるフレンチプレスのレシピをご紹介します。ホットはこの2つを抑えておけば、おいしくたのしめます」

参加者の皆さんは、手元に配られたレシピにメモを取りながら石井さんの一挙一同を見つめる。
使う抽出器具は「HARIO V60」のドリッパーに「三洋産業 アバカフィルター」。豆をひくグラインダーは「wilfa svart」の家庭用です。
「今回は陶器製のドリッパーですが、リーブス コーヒーではプラスチックのものを使います。うちのお店のように外気が入りやすい場所や屋外の場合、温度変化の少ない素材のほうがいいんです」
注ぐお湯の温度も味に影響するため、機材も適材適所。大切な基本を、石井さんは一つひとつ丁寧かつわかりやすく伝えていきます。

「ハンドドリップに使用するコーヒー豆は×16すると適したお湯の量がわかります。今回のレシピは12.5g×16で200ml。抽出すると出来上がりが180mlほどで、すごくちょうどいい。
淹れたコーヒーを飲んで、足りないとか多すぎるという場合は、0.5g単位で調整してみてください。コーヒーは数値化が大事。昨日はおいしかったけど今日はっていうのは、量と時間が違うんです。せっかくなら、おいしい一杯がいつも淹れられるようになると、コーヒーがもっと好きになるんじゃないかな」
「リンスをすると産地個性がより感じられます」
ペーパーフィルターをセットしたら、コーヒーの粉を入れる前に、お湯を注いで“リンス”。紙に含まれる独特のにおい成分を落とします。

「リンスを行うのは香りのため。僕は、ペーパーフィルターも蒸らすため、2度リンスします。
今日使っているフィルターは、地球環境に配慮した素材。コーヒーの投下スピードが速いから味にもポジティブです。漂白されているのでにおい成分も比較的少なくて、コーヒーの産地個性がより感じられますよ」
「爪楊枝で空気の隙間をつくると注ぎやすくなります」
続いてコーヒーの粉をスプーンで入れていきます。

「挽き目はフィルター用で、なるべく細かく。コーヒーは、粒の繊維を壊すことで味や香りがよく出ます。一方で、苦味やえぐみも出やすくなるので調整が必要です。
ドリッパーにコーヒーを入れたら、ならすためにトントンと叩きたくなるけど、叩くほど重い粒が下に行き、軽いものが上に行きます。それで抽出の速度が遅くなる場合もあるので、おすすめは爪楊枝で軽くグルグル。これで、コーヒーに空気の隙間をつくり、下までお湯が注ぎやすくなります」
「挽き目、時間、量を守れば、誰でもおいしいコーヒーが淹れられる」
全てをセットしたら、はかりの上にのせて、いよいよ抽出。
「お湯は50mlを10秒で注ぎ、30秒になったら次の50mlを注ぎます。秒速5gです」
「1投め、2投めは並行に、ふちのギリギリまで円を描いて注ぎ、粉にお湯をあてて全ての味の成分を出します。3投め、4投めは、ラフにお湯を注いでいいです。
特に最後の1投は、真ん中に一点集中。濃度を調整します。これで味はちゃんと出ているのに、後味はクリーンになるんです」

淹れたてのコーヒーを、まず石井さんが味見。続いて試飲カップに注ぎ、皆さんのもとへ。
今回は浅煎りコーヒーなので、液体が完全に落ち切るまで待ちます。深煎りの場合は、液体が少し残った状態でドリッパーを下ろしたほうが、おいしく仕上がるのだとか。
「コーヒーは温度変化でも味が変わるので、さっそく飲んでみましょう」
「まずは香りを嗅いでみてください。レモンキャンディーのような、フルーティーな風味が感じられると思います」
ひと口ずつ味わう皆さん。「スッキリしていて飲みやすい」「余韻がすごくきれい! 」と言葉が飛び交い、それぞれ感動している様子。
「挽き目、時間、量を守れば、誰でもおいしいコーヒーが淹れられますよ。疑問があったらいつでも質問してくださいね」
目の前でコツを教えてもらいながら、日ごろの疑問も解決していく。コーヒー好きな皆さんの表情が、どんどん生き生きとしていきます。
「フレンチプレスはテクニックいらず」
続いては、フレンチプレスです。石井さんによると、コーヒーをお湯につけて抽出するため、お湯の水流によるストレスがかからず、おいしい成分がたくさん出る方法なのだとか。
「コーヒー豆×15が、フレンチプレスのお湯の量です。今回は40g×15でお湯は600ml。お湯の温度は95度です。
挽き目はハンドドリップと一緒。普通はフレンチプレスだと粗く挽きますが、僕は細かく挽いて、お湯の温度をあげることで旨味を引き出します」

使ったのは「budum」のフレンチプレスです。「テクニックいらずな抽出方法」と石井さん。
「40gのコーヒーを入れたら、タイマーを押すと同時に600mlのお湯を全て注ぎます。最初に少しお湯を入れるパターンもありますが、このレシピは一気に注ぐ方法でOK」
「2時の方向を目指して注ぐときれいに入りますよ。全体が混ざらない場合は、フレンチプレスごと回すか、スプーンでかき混ぜてムラなくお湯にあててください」
時間が3分30秒になったら3回スプーンでかき混ぜ、「プランジャー」と呼ばれる蓋を乗せて待ちます。4:00になったらプランジャーを液面まで下ろし、コーヒーをカップに注ぎます。
「じっくり成分が出るので、すぐプレスすると、成分は出ていないのにネガティブなものは出てしまいます。だから必ず蓋をして蒸らしましょう。
フレンチプレスの場合は、オイルも出た、粘度のあるテクスチャーを感じる味わい。香りも味も強いコーヒーが淹れられますよ」
「単体でもおいしいけど違うおいしさが生まれる」
早速、味見。ハンドドリップと全く違うと、皆さん驚いています。そしてここでティラミスが配られ、いよいよペアリングタイム。

「ペーパーフィルターで淹れたものも残っている方は、そちらから飲んで食べてください。コーヒーとティラミスを一口ずつ、2回繰り返すと、それぞれ味が違いますよ。特にクリームの部分と対照的なペアリングが起こると思います」
じっくり口に運ぶ皆さん。「(スイーツを)食べるときと食べないときでコーヒーの味が変わる!」「チーズの部分がよく合う」「レモンケーキみたいになった!」と、さらなる驚きの声が。

「単体でもおいしいけど、一緒に食べるとまた違ったおいしさが生まれます。コーヒーにもスイーツにも、どっちにもポジティブ。とくにフレンチプレスはオイルも抽出されるので、味わいがきれいにマリアージュするかな」
ペアリングに加え、コーヒーも同じホットでも抽出方法による飲み比べをして、それぞれで引き出せる味わいの違いを感じていただけたようです。どちらはいいかは、好みやライフスタイルに合わせて。たのしみながら、これからのコーヒーはどうしようかと、皆さん思案している様子。
「コーヒーにストレスのかからないレシピは1:15と覚える」
そして、水出しコーヒーのデモンストレーションへ。「水出しはとくに、なかなかおいしく淹れられない」という悩みがあがる中「大丈夫、比率でおいしくなりますよ」と石井さん。しかも今回のレシピなら、1時間で出来上がるというから驚き。自宅用や急な来客に備える場合などに、気軽にサッと淹れられるレシピを覚えておくと便利です。
「比率は、コーヒー豆1:水15。フレンチプレスと一緒です。コーヒーにストレスのかからないレシピは1:15と覚えましょう」
使ったのは「DEAN & DELUCA」のフィルターインコーヒーボトル。
挽いた豆50gを入れたストレーナーをボトルに入れたら、50度のお湯を375ml、優しくストレーナーの真ん中に注ぎ、蓋をしてそのまま漬けます。1時間経ったらストレーナーを抜き、375mlの水を入れて完成です。
「出来立ては味がなじんでいないので、できればさらに1時間くらい冷蔵庫で冷やすといいです」

あらかじめ仕込んでおいた水出しアイスコーヒーとともに、再びペアリングもお試しいただきます。コーヒーを、まずひと口。続いてティラミスをひと口。これまでとまた違った印象が、口の中に広がります。
「水出しの場合、コーヒーの特徴は出ているけれど、やさしいボディ。でも、甘い。リーブス コーヒーのサマーブレンドは、フローラルやシトラスのキャンディのような印象が感じられるはずです。
これは、ティラミスが勝っていますよね。アイスの場合は、単体で飲むほうがいいかもしれません。
ペアリングは、濃度感で合わせ流のがコツ。もし、この水出しコーヒーに合わせるなら、フレッシュなフルーツや、軽ーいミルクプリンがいいかな」

そして、DEAN & DELUCAのサマーブレンドのような、コクのあるコーヒーの隠れた甘さを引き出すレシピもご紹介。
「この場合、比率は1:17。水600mlを先にカラフェに入れ、挽いたコーヒー豆35gをストレーナーに入れたらゆっくり浸します。そのまま冷蔵庫で12時間、水出ししたら完成です」
いずれもシンプルなレシピながら、参加者の方々からは「浅煎りコーヒーへのイメージが変わった!」「お店で飲んだアイスコーヒーの味が、家でも淹れられるなんて」と驚きと喜びの声が上がっていました。

最後に、参加者の方々からの質問タイムをたっぷりもうけて、ワークショップはお開き。明日からの一杯がさらにおいしくなる予感を胸に、皆さんお帰りくださいました。
今後も、コーヒーのワークショップを計画中です。どうぞご期待ください。
毎日のコーヒーに役立つTips
参加者の方からあがった質問をピックアップ。どうぞ毎日の「おいしい」にお役立てください。
Q 焙煎後のコーヒーは、どれくらいで飲みきるとよいですか?
リーブス コーヒーでは、焙煎して1~2週間後のものを販売しています。焙煎日から1ヶ月くらいがおいしく飲みきる目安です。
Q コーヒー豆は、お店で挽くのと自分で挽くのでは、どちらがいいですか?
やはり飲む瞬間に挽いたほうがいいです。ただし、挽いたコーヒーを3日や1週間ほどで飲み切ってしまうなら、お店で挽いてもらっても。1週間以上かかる場合は酸化するので、あまりおすすめできません。
挽いた豆は、袋の空気をしっかり抜いて、密閉できる袋で冷凍保存します。豆のままの場合は、密閉できる袋で空気を抜き、冷蔵庫へ。使う分だけ出して挽きましょう。
Q 2杯同時に同じドリッパーで淹れていいですか?
淹れられますが、一杯ずつ淹れるのがおすすめです。
Q リンスしてもペーパーフィルターのにおいが取れない場合は?
味はそんなに変わらないけれど香りに影響が出るので、そのペーパーフィルターは使わないほうがいいですね。
Q ペーパーフィルターで淹れる場合、お湯の温度は浅煎りと深煎りで変えたほうがいい?
今回は90度で淹れましたが、浅煎りの場合は88〜90度、深煎りの場合は80度に下げ、速度もゆっくり抽出するのがポイントです。
Q アイスカフェラテをつくる方法が知りたいです
最適なのは水出し用のフィルターインコーヒーボトルを使った「ミルクブリュー」という方法。比率は水出しと同じく、コーヒー豆1:牛乳15。水出しと違うのは、牛乳を一気に全て注ぎ込むこと。そして、冷蔵庫で12時間ほど漬け込んでください。牛乳は濃度が強くてフィルターを通りにくいので、味見をしてみて、場合によっては15時間くらい漬け込んでもいいかもしれません。
Q カフェオレをつくってみたいです
ハンドドリップなら、コーヒー豆1:お湯5。とても濃い抽出液をつくり、それが10gなら、ミルク70gを入れるとベストバランス。
「石井康雄さんに教わるおいしい抽出」
ご紹介商品

ワークショップでご紹介した商品の一部は、オンラインストアでもご覧いただけます。
HARIO V60 ハリオ セラミックドリッパー02セット
HARIO V60 温度調整付きパワーケトル・ヴォーノN
ボダム ブラジルコーヒーメーカー
DEAN & DELUCA フィルターインコーヒーボトル
LEAVES COFFEE ROASTERS サマーブレンド2022(豆)
DEAN& DELUCA サマーブレンド
DEAN & DELUCA ティラミス

【STORE NEWS】
カフェ 虎ノ門ヒルズ
現在『カフェ 虎ノ門ヒルズ』では、シングルオリジンのドリップコーヒーもおたのしみいただけます。ご注文ごとに豆を挽き、バリスタが丁寧にハンドドリップ。ラインナップは、3週間に一度入れ替わります。どうぞご期待ください。