PEOPLE想いをつなげる
私の選択が未来をつくる

「月曜は野菜を食べよう」という呼びかけのもと、ふだんは肉や魚も食べる人たちも、野菜中心の食事を選択するムーヴメントがあります。発信するのは、香港生まれの社会企業『Green Monday(グリーンマンデー)』です。
グリーンマンデーの提案は、一週間のうち一日だけ、いえ一食からでも構いません。お皿の上を、土から生えた「PLANT-BASED(プラントベース)」にしてみましょうというもの。普段のくらしの延長で取り組める気軽さを、どこか感じます。
野菜中心の食生活といえば「Vegan(ヴィーガン)」や「Vegetarian(ベジタリアン)」も知られますが、グリーンマンデーが提唱するのはプラントベース。さらにいえば、完全にプラントベースでなくてもOK。むしろ“ゆるやかな菜食主義者”の「フレキシタリアン」を増やしたいといいます。
プラントベースならではの味の重なりや広がりを生かした、野菜をたのしむメニューもご紹介している私たち。グリーンマンデー事務局を訪ね、その想いや考えを伺いました。
INTERVIEW
一人でも多くのフレキシタリアンを
グリーンマンデーが、一人でも増えてくれたらと願う「フレキシタリアン」は、“柔軟”を意味するFlexible(フレキシブル)とベジタリアンをかけ合わせた造語です。その代表であるデイビッド・ヤン氏は、日頃から「一人をヴィーガンにするよりも100人をフレキシタリアンにする方が、社会的なインパクトがある」と言っているのだとか。
「たとえば、ハンバーガー1個のお肉には、シャワー2ヶ月分の水を使うと言われています。食肉の環境へのインパクトが感じられるエピソードですが、多くのかたは知らない。でも、知れば『今日は野菜を食べよう』と思う機会が増えるかもしれません。私たちは、そういうふうに考える人を一人でも増やしたいと考えています。だから、世代や立場、国境などを超えて、すべての人に向けて、SNSや講演会などで身近な課題を伝えているんです」

香港で親しまれる飲茶も、豚のひき肉が使われる料理の一つ。こちらは代替肉でできている。
グリーンマンデーが立ち上がったのは、2012年の香港です。その食生活ゆえ、お肉の消費量も多い香港。ベジタリアンである代表のデイビッド氏は、日常に欠かせない食を通じて誰もがアクションできることを考え、プラントベースという野菜をたのしむ食文化で、気候変動、食料安全保障、健康問題といった、様々な問題解決に取り組もうと考えたそうです。
「当時、アメリカでは、ミュージシャンのポール・マッカートニー氏が『Meet Free Monday(ミートフリーマンデー』という活動をしていました。同じく『月曜は野菜を食べよう』という呼びかけです。でも、アジアにはあまり浸透しておらず、独自に必要だとデイビッドは考えたのです」
そこで、グリーンマンデーを個人活動としてスタート。ミートフリーマンデーとも協力し、今や世界中でそのムーヴメントを広げています。

飲食店でもオムニミートは使用されている。こちらは『俺のGrand Table』のヴィーガンハンバーグ
中でも現在、力を入れていることの一つが、独自開発した代替肉のオムニミートです。家庭でも気軽にタンパク質が摂れることを目指した大豆ミートで、非遺伝子組み換え大豆、椎茸、米など、プラントベースのタンパク質から生成されているのだとか。
「外食で、プラントベースのメニューを食べようと思うと、なかなか見つからなかったり、リーズナブルに済ませるのが難しかったり。そういう現実や声を解決できないかと開発しました。オムニミートは、アジア料理、特に日本料理との親和性が高く、餃子、おにぎりの具材、それからカツなどのように揚げてもおたのしみいただけますよ」
もちろん、これら代替肉がなくても「月曜は野菜を食べよう」は実行できると続けます。
「まずは、朝食をプラントベースにしてみるのはいかがですか。卵や牛乳を使用していないパンや、具材を工夫すればおにぎりも食べられますね。
また、身近な料理や食材を、プラントベースの目線で見てみると、案外いろいろありますよ。たとえば、パスタ料理。オリーブオイルと塩、トマトやバジルがあれば出来上がり。お豆腐は、単体でもおいしいですし、スープや鍋料理、炒め物など万能です。香港では干して麺状にしたガンスーという豆腐由来の食材もあります。外食なら、野菜だけのメニューも多いインド料理も便利です。
ちょっと意識してみると、実はあれもこれもプラントベースというものが、日本にはたくさんあります。精進料理がある国だからでしょうか」

DEAN & DELUCAでも、プラントベースのデリ惣菜やランチメニューをご用意。目印は「PLANT-BASED」のしるし。
生活習慣を、急に変えるのは難しいものです。中でも食生活は、一日のたのしみであり、生きるよろこび。健康のためなどという理由があっても、やはり心地よくないと、変えても続きません。
「そのためにも、気軽でおいしいということはとても大事。広い間口があったうえで、野菜を食べると自分の体が心地よくて、さらに地球環境にとってもグッドなのだと知れば、プラントベースがもっと身近になるかもしれません。だからまずは、フレキシタリアンをたのしんでいただければ」
その一皿が地球の未来を救う、などと言われると、ちょっと驚いてしまうかもしれません。でも、日々の食卓でどのような選択をするかは、実は、そう遠くない未来のグッドに繋がっているーー。そう考えると、なんだか素敵。だから、次の月曜は、野菜を食べませんか。

Green Monday|グリーンマンデー
「Make Change Happen, Make Green Common(グリーンをあたりまえに、変化を起こそう)」というビジョンのもと、創設者兼CEOであるデイビッド・ヤン氏により、2012年に香港特別行政区に創設。アジアでは初めてフレキシタリアンのライフスタイルを提唱し、大規模なプラントベースのムーブメントを巻き起こした。日本へは2021年3月に参入。