PEOPLE想いをつなげる
地産地消が教えてくれること

四季のある日本では、時期や地域ごとに、様々な花が咲きます。見た目や香りもそれぞれ。そんな花から採れる「おいしい」の一つといえば「蜂蜜」。
そもそも、ハチが蜂蜜をつくるのは、自分たちの保存食や子どもの餌として、巣を存続させるため。また、一匹のハチが一生をかけて集める蜂蜜は、ティースプーン一杯程度といわれています。たいへんな労力のかかった、自然のサイクルから生み出される恩恵を、私たちはいただいているのです。
さらに、蜂蜜を集めるミツバチは、ほとんど一つの花みつしか集めない習性をもつのだとか。だから、純粋なものは、口に含むと個性豊かな花の香りが拡がります。
DEAN & DELUCAでも、世界中の様々な蜂蜜をご紹介していますが、中でもこの時期ならではの蜂蜜があります。それは、2019年にオープンした東京・代官山にある東京音楽大学のカフェで、東京のファーマー「Ome Farm(オウメファーム)」協力のもと学内で養蜂を行い、採取した蜂蜜です。

この春も、カフェのある目黒川周辺には多くの桜が咲き、良質な蜂蜜を採取できました。口いっぱいに広がる、まるで桜餅のような香り。上品で、大人っぽく、シナモンやラム酒といったリッチな味ともよく合います。
本物ならではの、滋味深い味わいを、一人でも多くの方にお届けしたい。そこで今シーズンも、数量限定で、オンラインストアでもこの蜂蜜をご紹介します。
その販売を前に、蜂蜜採取を手がけるOme Farm代表の太田 太さんとWELCOME代表の横川正紀にインタビュー。この取り組みに込めた想いをお届けします。
INTERVIEW
都市だからできること。都市からできること。
私たちがご紹介する蜂蜜は「都市養蜂」でつくられています。都市養蜂とは「Biodiversity(生物多様性)」を掲げ、15年ほど前から東京都心など街で行われている養蜂のこと。
「東京は、公園や街路樹のおかげで無農薬で育つ花や樹木が意外に多いから、そもそも養蜂に向いているそうです。都市養蜂は、こうした守るべき環境に気がつかせてくれるうえに、ミツバチは、その状態の良し悪しも教えてくれる環境指標生物としての一面もある。DEAN & DELUCAとして、これからもお客さまにおいしいものを届け続けるため、機会があれば応援したい取り組みの一つでした(WELCOME・横川)」
その魅力は、採れた蜂蜜を採れたエリアで消費する「ゼロマイル消費」にこそあると、太田さんはいいます。
「『ごちそう』とは、本来、人をもてなすために彼方此方を奔走することにあります。ところが今は、宅配業者があらゆるものをクリック一つで運んできてくれる時代です。だからこそ、東京で農業や養蜂ができるのは、フードマイレージの観点からも未来性がある。
東京は、一級河川沿いに薬剤を撒いてはいけないという決まりがあります。ですから、養蜂をやりやすい環境なんですね。盗難の心配もありますが、人の目も多いのが都心。セキュリティ面も含め、利点は多いです(Ome Farm・太田さん)」
それぞれに「都市養蜂」への可能性を感じていた両者。

© PERFECT DAY 04(講談社 Mook(J))
ストーリーは、東京音楽大学・代官山キャンパスの学食を、DEAN & DELUCAがプロデュースすることになった2017年にさかのぼります。「街に開かれた大学に」というテーマのもと、わたしたちがメニュー開発や場づくりに取り組もうとしていた、ちょうどその時。もともとご縁のあった太田さんが「都心で都市養蜂をやりたい。できるなら、目黒川周辺で」という話を聞きつけました。
「(東京)青梅で、有機農法でのユニークな野菜の栽培をするOme Farmには、以前から共感していました。
ある日、その太田くんから『都心で養蜂できる場所を探していて、一番の希望は目黒川周辺』と聞いたんです。彼らが、さらに養蜂を始めることで、地域全体に環境への啓蒙を広げようとしている。素直に共感しましたし、聞いたのが、まさにわたしたちが東京音楽大学代官山キャンパスの学食プロデュースをお受けした時期! そのまま、音大の学長に屋上での養蜂をもちかけたところ、快くご賛同いただきました。
太田くん曰く、代官山キャンパス周辺の中目黒エリアは、目黒川、西郷山公園、ヒルサイドテラスなど、緑豊か。樹種も、桜、ゆりの木、もちのき、えんじゅ、住宅街の柑橘類など、ミツバチたちにとって素晴らしい環境なんだとか。
また、大学にとっても、環境保護的な意味合いもありながら、学食のメニューに使うことで学生の学びにもなる。さらには、街の新たな名物になればなおよし、と後押ししていただけました(WELCOME・横川)」
「中目黒エリアでの都市養蜂は、以前から考えていました。しかもそれが、声楽科のある東京音楽大学のキャンパス内で行えて、その場で食べていただける。とても意義のあることだと思いました。(太田さん)」
まさに「三方よし」で動き始めた今回の取り組み。インタビュー後編では、そのおいしさの本質について、ご紹介します。

太田 太 |FUTOSHI OTA
「Ome Farm」代表。 1982年、東京都出身。 3才まで NYで暮らし、 21才で再渡米。現地で食の楽しさ、大切さを実感。その後世界各地を放浪、帰国後はファッション業界へ。 2014年から農業に転身し2015年に東京・青梅で「T.Y.FARM」をスタート。 2017年、 “東京生まれ、無農薬育ちの野菜”を手がける 「Ome Farm」として独立する。
オウメ・ファーム|Ome Farm
http://www.omefarm.jp/
OUR RECOMMEND RECIPE
日頃、メニュー開発を担当するメンバーに、おすすめのたのしみ方を聞きました。

「この蜂蜜は、大人な、そしてどこかエキゾチックな、アジアンやモロッコ料理などのメニューによく合います。たとえば、濃く煮出したチャイの仕上げにたらしたり、そのチャイでつくったプリンにシナモンとかければベストマッチ。ラム酒を効かせたラムレーズンケーキにかけて、ワインとたのしむのもおすすめです。
もちろん、シンプルに焼き立てのトーストに合わせてもおいしいでしょう。やさしい口当たりと大人っぽい香りなので、香りの強いチーズにも合います」